「家で最期を迎えたい」という希望を持つ方は年々増えています。しかし、いざ在宅看取りを選ぶと決めたとき、家族には大きな不安が押し寄せます。
「自分に介護ができるのか」「何を用意しておけばいいのか」──。
訪問看護師として数多くの在宅看取りに立ち会ってきた筆者が、後悔をできる限り減らすために今からできる7つの準備をお伝えします。
まず知っておきたい「在宅看取り」とは
在宅看取り : 病院ではなく自宅で最期を迎えることを選ぶケア
病院での看取りは医療体制が整っている一方、家族の希望や本人の生活ペースを優先することが難しい場合があります。
一方、自宅なら本人が過ごし慣れた空間で、家族とともに日常を感じながら最期まで過ごせます。
ただし、家族が中心となって医療や介護を支える必要があり、「何をどこまで自分たちが担うのか」を事前に理解しておくことが大切です。
準備① 医療・介護体制を早めに整える
在宅看取りは一人の力で完結するものではありません。
主治医、訪問看護師、訪問介護、薬局など、多職種が連携してこそ安心したケアが実現します。
まずはかかりつけ医に「在宅で看取りたい」という希望を伝え、訪問診療が可能かを確認しましょう。
ケアマネジャーを通じて訪問看護ステーションや介護サービスを早めに手配することで、急な体調変化にも対応しやすくなります。
準備② 本人の希望をしっかり聞く
延命治療をするか、痛みをどこまでコントロールするか、どこで最期を迎えたいか――。
これらは家族だけで決めるのではなく、本人の意思を尊重することが何より大切です。
早めに話し合い、エンディングノートや書面にまとめておくと、いざという時に家族が迷わず判断できます。
「もっと早く聞いておけばよかった」と後悔されるご家族は少なくありません。言い出しにくくても、元気なうちに話しておくことが安心につながります。
準備③ 家族の役割分担を決めておく
在宅看取りでは、家族のサポートが欠かせません。
ただ「みんなで頑張ろう」では、実際に誰が何を担当するのかが曖昧になり、負担が一部の人に集中するケースが多く見られます。
仕事をしている人、遠方に住む人など、それぞれの事情を踏まえ、できる人ができる範囲で役割を決めておくと安心です。
準備④ 住環境を整える
自宅での療養を安全に続けるには、住まいの環境調整が欠かせません。
ベッドの位置を動線に合わせて配置したり、段差を解消したり、トイレの近くに寝室を移したりするなど、小さな工夫が介護のしやすさを大きく変えます。
介護ベッドや車椅子などは福祉用具レンタルを活用すると、費用を抑えながら必要な設備を整えられます。
準備⑤ 緊急時の連絡・対応方法を確認
夜間や休日に体調が急変した場合、誰に連絡すればよいのかを明確にしておくことは非常に重要です。
主治医、訪問看護ステーション、救急の連絡先をメモにまとめ、家族全員がすぐ見られる場所に貼っておきましょう。
実際に「どのタイミングで電話するか」まで具体的に共有しておくと、慌てず対応できます。
準備⑥ 家族の心のケア
在宅で大切な人を看取る過程は、想像以上に心身の負担が大きいものです。
「自分が倒れたらどうしよう」「これで良かったのだろうか」と不安に押しつぶされそうになる家族も少なくありません。
訪問看護師や地域包括支援センターには家族の相談に応じる窓口があります。一人で抱え込まず、「頼ることも大切なケア」と考えてください。
看取りを終えた後、「もっと気持ちを話せばよかった」と振り返る方は多いです。自分の心を守る準備も忘れないでください。
準備⑦ 経済的な見通しを立てておく
訪問看護や訪問介護は介護保険・医療保険を利用できますが、自己負担が発生することもあります。
在宅看取りでは薬代や福祉用具レンタル、緊急対応の追加料金など、予想外の出費が出るケースも。
ケアマネジャーや訪問看護師に相談し、おおよその費用を事前に把握しておきましょう。
①医療・介護体制を早めに整える
②本人の希望をしっかり聞く
③家族の役割分担を決めておく
④住環境を整える
⑤緊急時の連絡・対応方法を確認
⑥家族の心のケア
⑦経済的な見通しを立てておく
後悔を減らすために大切なこと
在宅看取りは、家族にとって大きな挑戦です。
しかし、早めの準備と専門職との連携があれば、「あの時こうしておけば…」という後悔を減らすことができます。
完璧を目指す必要はありません。大切なのは、家族が一緒に過ごす時間を大切にすること。
訪問看護師はその思いを支える伴走者として、あなたのそばで力になります。