訪問看護は病棟経験がないと難しい?
たしかに病棟での臨床経験は基礎力として必ず役立ちますが、実際に訪問看護の現場で必要とされるのは病棟とはまた違うスキル。
この記事では訪問看護の現場で「病棟経験以上に大切」と言われるスキルを、訪問看護師の目線からわかりやすく紹介していきます。
「病棟経験が少ないから」「病棟でうまく働けないから」と訪問看護を諦める前に、一度読んでみてください。

病棟看護と訪問看護の大きな違い
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病棟看護:医療機器や医師・仲間の看護師に囲まれた環境で、治療や急変対応が中心。
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訪問看護:自宅という生活の場で利用者さんと家族の「暮らし」を支え、予防や継続的なケアが中心。
この文章だけ読んでも、「病棟=治療の場」「訪問=生活の場」という大きな違いがあることがわかります。この違いをきちんと理解して、スキルアップに繋げることが大切です。
訪問看護で特に役立つスキル5選
ここからは、生活の場である訪問看護で役立つスキルを5つ紹介します。
コミュニケーション能力
訪問看護では利用者さんはもちろん、ご家族やケアマネジャー・介護スタッフなど多職種と関わります。ここで特に重要なのは「信頼関係の構築」です。
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患者さんに安心してもらう会話力
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家族の不安や本音を引き出す傾聴力
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他職種と円滑に連携する調整力
ただコミュニケーションを取るのではなく、「信頼関係を構築するためのコミュニケーションスキル」を磨くことを意識してみてください。
アセスメント力(観察力)
訪問先では、医師や同僚がすぐそばにいるわけではありません。
先輩に電話などで相談できる環境だったとしても、自分が訪問して得た情報を持って相談しなければ先輩もろくなアドバイスができません。
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表情や食欲の変化 → 「笑顔が減った」「冷蔵庫内の食品が減っていない」
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室内の温度や衛生状態 → 「エアコンが消えていることが増えた」
「台所のシンクにお皿が溢れていた」 -
家族の様子や介護疲れ → 「家族が”あまり寝れてなくて”と笑っていた」 「普段の生活について話してくれなくなった」
「訪問看護=生活の場」だからこそ、身体以外の生活場面を見て情報収集・アセスメントするのも、訪問看護師の大事なスキル。
少しの変化に気づくことが、大きな変化を予防できるキッカケだったりします。
柔軟な対応力
訪問先で出会う状況は千差万別。対ご家族でお話する頻度も病棟以上。
ご本人・ご家族に「在宅看護」について理解いただいて、状況に合わせて柔軟に対応するスキルも大切です。
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医療機器が限られている → 金銭面で医療機器の使用に消極的な方の場合、どうする?
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予想外の生活環境(段差や狭い部屋など) → ADL介助だがお風呂場が階段を超えた先にある場合、どうする?
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急な依頼や家族の要望 → 24時間契約をしていないのに、訪問診療医から訪問指示が出たらどうする?
「病棟のマニュアル通り」では対応できないことも多く、生活の場だからこそ治療に対しての理解を得にくい場面も。
先輩の対応方法を見ながら、確実に磨いて行きたいスキルです。
セルフマネジメント能力
訪問看護は基本的に一人で動きます。時間管理や記録、感染対策や体調管理まで「自分で責任を持つ力」が不可欠です。
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訪問スケジュールの調整 → 次の訪問に間に合わない可能性
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感染症流行時の安全管理 → 病棟のように細かな感染対策ができるか
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自分の心身のセルフケア → 1人で訪問・判断するプレッシャー
訪問看護師は基本的に1人、というイメージが強いかもしれませんが、実はもっと大切なのは「相談できる力」です。
セルフマネジメント途中で「あれ?」と思ったタイミングで、先輩・上司に必ず相談しましょう。
自立支援の姿勢
訪問看護は「利用者さんと家族が自分らしく生活できること」、すなわち「自立支援」の関わりをする立場でもあります。
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家族ができるケアを一緒に実施する
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本人ができることを尊重し、支援する
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看護師が不在の間でも、ご自身でできるように環境調整する
このように、利用者さん・ご家族が訪問看護を通して自立して生活できるよう、治療<生活であることが多いことを意識して介入しましょう。
①コミュニケーション能力
②アセスメント力(観察力)
③柔軟な対応力
④セルフマネジメント能力
⑤自立支援の姿勢
病棟経験より大切な理由
ここまで紹介したスキルは、病棟経験がなくても身につけることができます。むしろ、病棟経験が長いほど「病院基準の看護」に慣れてしまい、在宅の柔軟さに戸惑うことも少なくありません。
訪問看護で本当に大切なのは、「技術」よりも「生活を支える力」。
だからこそ、病棟経験が浅くても「訪問看護に向いている人」は多いのです。
これから訪問看護を目指す方へ
訪問看護に必要なスキルは病棟経験ではなく、 「患者さんや家族とどう関わるか」 という姿勢から磨かれていきます。
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人と関わるのが好き
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小さな変化に気づける
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柔軟に考えるのが得意
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一人でも責任感を持って動ける
これらの特徴がある人は、訪問看護にとても向いています。
あなたの持つ強みを最大限活かすことができるかもしれない訪問看護。病棟経験だけに捉われず、自分に伸ばせるスキルはどういうものか?考えてみるのも一つです。